舞姫
大宝寺の石段に桜の花びらが
風流に敷き詰められていた。
手水の上に花びらが浮かぶ。
今しか見れない景色である。
目を凝らせば至る所に感動がある。
おセンチになったところで、文学をひとつ。
「感想って言われても~っ。あ~いらいらするぅっ!」
普段温厚な長女がめずらしく憤慨している。
事情を聴けば宿題で森鴎外の「舞姫」の感想を求められ
ているらしい。
お~知ってる知ってる。涙とか落書きしたなぁ。
どれどれと本文に目を通してみると、
「なんじゃいこりゃぁ。」文語体である。
いらいらするはずである。
悪い予感は的中して、アドバイスを求められる。
一瞬躊躇したものの父としての威厳が問われる。
「貸してみなさい。」おもむろに教科書を受け取ると、
筋肉で出来た脳味噌を振り絞って、力ずくで音読する。
四分の一程を一気に読んで残りの量を確認して、再び
読み続けると「スースー」と変な音がする。
明治の雰囲気を演出しながら、独特の抑揚で読んでいた
つもりが、長女の子守唄になってしまったようで、私に
もたれて眠りはじめた。
いい気なものである。
いずれにせよ、しかけたオ○コと読書はやめられない。
一気に力ずくで読み終えた。
「おいっ。こらっ。寝るなっ。」
たたき起こして教科書をかえす。
「率直な感想をいえば、田嶋先生に読ますな。かな。」
原発に原爆を落とすようなものだ。
「そうそう。男尊女卑よねぇ。優柔不断で。」
「うん。そんなところで上手にまとめたんで
よろしいでしょう。」
ふうっ。弱い脳味噌がへとへとである。
今宵の余は電気ブランなぞを所望するものなり。
「明治時代かっ!」
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