逃避癖
私には生まれついての悪い癖で逃避癖というのがある。
心理学で定義付けられるところのそれは、辛いことや
苦しい現実から、するりと身を交わして逃げてやろうと
試みるのである。
酒などはその最たるもので、早速お正月からやり過ぎてしまい、
長女がタオルを投げてくれた。
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ふらついた身体のまま一階の事務所に下りる。
すると、ここにも一人、親譲りの逃避癖を誇るヘキサゴンな
次女が、先日、生家から余計なものを持ち帰っている。
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学生の頃、バイトのお金で夢を買った。
結局モノにならなかったエレキ・ベース。
受験を控えた彼女にとって、とにかく自分の気持ちを逃がせる
、どんな些細なものにでもすがりたいのであろう。
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幸いご近所の人々は、遠方へでも出かけられて留守のよう
だったのでアンプに灯を入れてみる。
錆びついた弦を弾いてみても、運指が思い出せない。
チョッパー奏法でアメリカ国歌をたどたどしく、つまりつつはじいて
苦笑し、電源を落とした。
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埃にまみれたアンプをウエット・ティッシュで拭っていると
後方の開口部から…出るわ出るわ煙草の空き箱。
年月を見ると昭和57年の表記があった。
モノにならない由縁である。
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