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2008年11月23日 (日)

犬も歩けば。

妙な虚脱感とともにぼんやりと目覚めた。

そんな私を叱咤するかのごとく、木春くんより急ぎの見積り

及びデータ作成の依頼がある。

慌しくまとめあげたファイルをメール添付で送ろうとしたものの、

容量が大きすぎてエラーになる。

仕方なくCDにデータを焼いて直接届けた。

「さて。昼から飲んでこましたろ。」

などと悪しき考えが頭をよぎり、近所の大型酒店へ。

トラックを駐車スペースに潜りこませるべく、やっと一台分の

空きスペースをみつけ、進入を試みるも、不埒にも前を横切る

一人の男。

目力を入れてよくよく見れば…。…。

見た顔…。

脳に蓄積されたデータファイルが拡張子をJPGに変換して、

光速スライドショーが展開する。

口を半開きにしたまま真っ白な瞳で探し当てた一枚。

ビンゴ。

「Iさんっ!Iさんぢゃないですか!」

「…。???。」

サングラスを外して助手席に投げ飛ばすと、Iさんは驚愕の

笑みで破顔した。

「うおっ!moukunっ!」

無理もない。20年ぶりだもの。

工業高校の先輩でもあるIさんは、新入社員であったダメな私

を、ことのほか可愛がってくれた。

エッチなことと、車のことしか考えてなかった当時の私は、仕事

においても当然のごとくミスを連発し、たちの悪いことに、その

ミスさえも反省せずにそっぽをむくようなダメ人間であった。

世間に「新人類」という言葉が流布した時代。

そんな私が、ある日フォークリフトで社屋を突き破ったとき、

「moukun。お前。これ以上ペナルティーがついたらやばいから。

これは、俺がやったことにしておくぞ。」

男気に身体が震えて、その日から私は変わった。

瞬く間に優良社員表彰として自社株のご褒美をいただいたのも

Iさんのおかげである。

記憶というのは、すごいもので当時の光景がリアルに浮かぶ。

繁華街に飲みに出かけた私が仲間と別れ、帰路についた時

一際輝きを放っている、人待ち顔のIさんを見かけた。

ホストの男なんぞ足元にも及ばぬ貴公子が黒いコートを纏って

腕時計を眺めていた。

私のワイフにでさえ「Iさんのファン。」だと言わしめた美男子は

今年で48になると言う。

私の同期入社の男の話。お互いの子供の話。現在の暮らしの

話。

延々と男同士の立ち話は続いた。

早く気付いてあげなければならない。

Iさんは両手に沢山の買い物袋を携えて、そろそろ指が

血行不良で壊死する寸前。

名刺を手渡し、「遊びに来て下さい。」と伝えてお別れした。

人間。生きてるとハッピーな一日もあるもんだと感じた。

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