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2008年11月26日 (水)

MIZUTAMARI

少し前から異変は感じていたものの、大の病院嫌い

(主に注射。痛いの怖い。)により放置していた。

ところが先日の北海道の現場を終えてからというもの、

一向に痛みが退かない。

右の膝だけにとどまらず、左の膝まで痛みはじめたので

仕事に支障が出てはまずいと、急遽、心を鬼にして「渡る世間」

のテーマをハミングしつつ、恐怖の整形外科を訪ねてみた。

ごく近くにある「T整形」は、木春パパの口コミで知っていた。

よく聞く話で、「整形外科という処は、お年寄りにとっての

コミュニティーの場と化している。」との噂。

真実であった。

受付時間さえ確認せずに、「お年寄りは朝早いからなぁ…。」

と余裕を勘案して8時に訪れると、すでに内部は満員御礼。

永谷園の懸賞幕まで周りそうな勢い。

思い切り聞こえるヒソヒソ話によると、どうやら5時30分くらいから、

お年寄りは暗躍しているらしい。

…元気ですねぇ…。諸先輩方。

きみまろ、もしくは毒蝮三太夫に変身したい気持ちであった。

勝手がわからず、受付の前で、まごまごしている私を、関西の

オバチャンが見逃すはずもない。

ヨーダのようなお姐様がツカツカと健脚で忍びよる。

「ここにな。これとこれを書いて…。」

「はぁ…。」

「受付に出すっ!…ちっ!」

アゴでしゃくられても…。あたいはじめてなんだもん。グスン。

「あ。ありがとう、お母さん。でも受付9時からになってるみ…。」

「カーテンの向こうには、もうおるんじゃけん。すいませ~んっ!

すぅういませえぇ~んっ!」

背伸びして叫ぶヨーダ姐さん。

はたしてカーテンは開いた。オープン・ザ・セサミである。

色白の可愛い受付嬢に、「あの~。はじめてなので。どうすれば?」

と訊ねる。

「あらん。そうなのぉ?じゃあ…先に歯を磨いちゃってくださいな。」

なんて…そんなお店ぢゃあないっ!軌道修正。

てきぱきと医療事務をこなしてくれた彼女に、「かなり待ち時間

かかりますかねぇ?」と低俗な質問を投げかける。

すでに個人病院特有の順番表の47番目にサインしておいて。

ところが意外にも軽い口調で「いえ。そんなことないですよ。」と。

本当だろうか?彼女の時間の基準も曖昧なまま、ヨーダ姐さんに

お礼の合図を済ませて、表のベンチで煙草をくゆらす。

そんな私の傍らを、ひっきりなしに院内に詣でる人。人。人。

…そんなに人間が入れるのか?

いまにサザエさん家の山小屋みたいに4の字を描いて建物が

揺れるのでは?と心配させるほどの盛況ぶりである。

挙句の果てには町内会長さんまで登場したので、ご挨拶をした

ものの、益々耳が遠くなっておられる様子で、緩慢な動作のまま

院内へとロボットのように没した。…知らない。…もう。

溜め息とともに二本目の煙草に火をつける。

すると、唐突に、外部にも聞こえるくぐもったアナウンスが、

てきぱきと患者を振り分けはじめた。

「○○さ~ん△△さ~ん。物療の前へ。××さ~ん□□さ~ん。

診察室の前へ。」

私が最近お世話になっている全国展開の激安オートメーション

理髪店のスローガンが浮かぶ。たしか壁にかかってたっけ。

人の頭をじゃがいものように効率よく扱ってくださるナイスなお店。

川の流れは美しい

川の流れる様に

仕事を流す

止めたら洪水

川の流れは大きな石をも流す

サービスで「耳も刈ります!」と書いてあげたいけど…。

叱られるのは嫌だ。

などと感慨に耽っていると、スレンダーな看護師さんが水色の

素敵なナース服で院内から飛び出してきた。

「moukunさ~ん…。moukunさ~ん…。」

呼びかけに答えるように右手を挙げて彼女に従う。

「てめぇか?コノヤロ?探してんのに。手間取らせるな!」

と書いてある背中に恐縮しつつも診察室の前。

なぎら健一風の、優しそうな先生は、私の足を見るなり、

「あらあっ!よく我慢してましたねぇ?ここまでぇ?」。

冗談ぢゃない。昨日も大型トラックの荷台を何度も昇り降り

した大切なアンヨである。

「完全に水が溜まってますよぉ。」

「…。原因は…。酒の飲みすぎですかねぇ?」

「いや。レントゲンを見るに軟骨の減りでもないし、…。へんな

角度に曲げられました?」

うん。

へんな体位はとってないけど、足場の昇り降りは、此処のところ

熾烈を極めたんだ…。

冷たそうな銀色のトレーに、大嫌いな注射器が並ぶ。

大ぶりなサイズが。何本も。

見てみぬ振りをしつつも、すでにブルーのテーマが流れる。

今日は由紀さおりさんがスキャットを唄ってくださった。

寺島しのぶ風の看護師さんが私をベッドへといざなう。

…決して楽しいことが始まる訳ではないのがわっかっていても

男の子という生き物は、総じてアホである。

鼻の下を伸ばしたままファッションヘルスのようなベッドへ。

「もう…。いいの私。…好きにして…」。

覚悟を決めると、

「ちょっと痛いですよぉ~っ!」

嬉しそうに私の膝に針をつきたてる先生。

「せっ!センセ…イッ!…。お…男ってみんな…けだものよっ!」

と叫びたかったが、周りの看護師さんの目があるので我慢した。

というより想像したほどの痛みではなく、むしろ悪いものを

吸い取ってもらっている感が強かった。

「ああ。これで、あたいも真っ当な人間になれるわ…。」

一仕事終えた大ぶりの注射器には私の悪しき体液が充満して

いる。

昔懐かしいニッケ水の黄色みたいな体液。

「左はねぇ。二本も捕れたよぅ。」と昆虫採集のごとく喜ぶ先生。

よかったね。先生。

事後処理は寺島さんが担当してくれ、カーテンで締め切った

個室で優しく湿布薬及びサポーターを装着してくれた。

ふと気付いて、重病人でもないんだから自分で装着しようと

手を伸ばし、「ありがとう。あとはできます。」と艶っぽく言うと

彼女の頬が少し赤らんだように見えた。……だけ。

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2008年11月23日 (日)

犬も歩けば。

妙な虚脱感とともにぼんやりと目覚めた。

そんな私を叱咤するかのごとく、木春くんより急ぎの見積り

及びデータ作成の依頼がある。

慌しくまとめあげたファイルをメール添付で送ろうとしたものの、

容量が大きすぎてエラーになる。

仕方なくCDにデータを焼いて直接届けた。

「さて。昼から飲んでこましたろ。」

などと悪しき考えが頭をよぎり、近所の大型酒店へ。

トラックを駐車スペースに潜りこませるべく、やっと一台分の

空きスペースをみつけ、進入を試みるも、不埒にも前を横切る

一人の男。

目力を入れてよくよく見れば…。…。

見た顔…。

脳に蓄積されたデータファイルが拡張子をJPGに変換して、

光速スライドショーが展開する。

口を半開きにしたまま真っ白な瞳で探し当てた一枚。

ビンゴ。

「Iさんっ!Iさんぢゃないですか!」

「…。???。」

サングラスを外して助手席に投げ飛ばすと、Iさんは驚愕の

笑みで破顔した。

「うおっ!moukunっ!」

無理もない。20年ぶりだもの。

工業高校の先輩でもあるIさんは、新入社員であったダメな私

を、ことのほか可愛がってくれた。

エッチなことと、車のことしか考えてなかった当時の私は、仕事

においても当然のごとくミスを連発し、たちの悪いことに、その

ミスさえも反省せずにそっぽをむくようなダメ人間であった。

世間に「新人類」という言葉が流布した時代。

そんな私が、ある日フォークリフトで社屋を突き破ったとき、

「moukun。お前。これ以上ペナルティーがついたらやばいから。

これは、俺がやったことにしておくぞ。」

男気に身体が震えて、その日から私は変わった。

瞬く間に優良社員表彰として自社株のご褒美をいただいたのも

Iさんのおかげである。

記憶というのは、すごいもので当時の光景がリアルに浮かぶ。

繁華街に飲みに出かけた私が仲間と別れ、帰路についた時

一際輝きを放っている、人待ち顔のIさんを見かけた。

ホストの男なんぞ足元にも及ばぬ貴公子が黒いコートを纏って

腕時計を眺めていた。

私のワイフにでさえ「Iさんのファン。」だと言わしめた美男子は

今年で48になると言う。

私の同期入社の男の話。お互いの子供の話。現在の暮らしの

話。

延々と男同士の立ち話は続いた。

早く気付いてあげなければならない。

Iさんは両手に沢山の買い物袋を携えて、そろそろ指が

血行不良で壊死する寸前。

名刺を手渡し、「遊びに来て下さい。」と伝えてお別れした。

人間。生きてるとハッピーな一日もあるもんだと感じた。

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子供がまだ食ってる途中でしょうが!!

帯広の現場は、午後3時ともなるとすでに夕方の陽射し

となり、とにかく日没が早かった。

地球上での四国との座標の違いはもとより、西側に聳える

日高連峰が初冬の太陽を早々に飲み込んでしまうからである。

初日にホテルに戻って身体の異変に気づく。

数年前に悩まされた原因不明の蕁麻疹が二の腕に見えた。

アナフィラキシー・ショックを起こして救急車で搬送された悪夢が

想い起される。

完治したと油断して、薬は一錠しか持参してない。

処方箋の必要な薬ゆえ、旅先で入手するのは困難である。

さて。困ったぞ。

ピンチのテーマが流れはじめる。

はたと思いついて携帯電話を手にした。

予備の薬のある場所とホテルの住所、部屋番号を記して

娘にメールを入れる。「至急、速達にて送って。」

返す刀で電話がかかった。

心配するワイフの声に、さほど酷い症状ではないことと、

当面の薬はある旨を伝え、替わった娘に詳細を確認した。

結局、酷い症状には至らず、二日後に届いた薬は不要と

なったが、感謝のメールを送っておく。

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仕事自体は、アクシデントが発生しつつも金曜日には

終了した。

札幌支店のダンディーな支店長も駆けつけて慰労くださり、

美味しいジンギスカンをご馳走になったりした。

予定通り、金曜昼までに積み込みが終了したので、過酷な

現場を支えてくださった帯広の人々と固い握手をかわして、

感謝の言葉を伝え、笑顔でお別れした。

「田舎に泊まろう。」のエンディング状態の私は、涙をこらえる

ので精一杯だった。

札幌支店の車をお借りして、帯広を離れた私達は、日勝峠

を越えて札幌の街へとむかった。

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到着時には、すっかりと暗くなっていたが、札幌支店に搬入し

なければならない荷物があったので、小雨の中、皆で作業した。

事務所でコーヒーをいただく頃には疲労もピークに達しており、

美しい事務員さんに色目を使う元気さえ失せていた。

以下長くなるのでダイジェストで。

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(十勝名物の豚丼)。

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(ホーマックにも行きました。)

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(居酒屋のシマホッケ最高。店員さんも色白美人。)

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(時計台の下で銀杏の落ち葉を拾いました。)

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(禁煙の街札幌。私は住めない。)

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(二条市場の活気。安くしてくれた。)

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(美女を盗撮したり。捕まるぅ。Mよ。見切れてるぞ。)

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(生キャラメルに付和雷同する人の群れ。)

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(また行ってみたい美しい風景。)

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2008年11月17日 (月)

十勝晴れ

「ぢゃ。行ってまいるぞよ。」

照れるワイフにフレンチ・キスをすると階段を駆け下りる。

約束の時間通りに旧友Mが、妻君の助手席に納まって

迎えにきてくれた。

7:35松山発、羽田行きは整備の遅れのため20分遅れで到着。

煙草を吸う猶予さえ与えられずにマイクロバスで搬送された

我々がギリギリで乗り込んだ便は、隣席に美女が乗っていたにも

かかわらず、無事、定刻に新千歳へと降りたった。

出迎えてくれた本社のO氏が駆るインスパイアは快調に帯広

へと進路をとる。

途中、夕張で食事をとり、残雪の日勝峠を経由して帯広の現場

へと到着した。

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そこに見たのは充分なボリュームを携えた現場であった。

はたして一週間の工期で間に合うか知らん?とMの段取りを

疑う私がいた。

加えて、未だ午後3時を廻った時刻にもかかわらず、すでに

夕刻の陽射しであることに、北半球の憂鬱を想い、西側に

聳える日高連峰に畏怖の眼差しを向ける私がいた。

シベリア抑留生活を覚悟していた私に与えられたのは狭いなが

らも清潔な個室の部屋で、隣室のMのイビキさえ響かなければ、

申し分のない居住空間であった。

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…いや。本当に。

笑いごとではないのである。

当初、携帯電話のバイブ機能の音かとおもいきや、壁一枚

隔てたヤツのイビキの音であったのである。

デリヘル嬢を召還できるほどの設えではないという事実を

突きつけられる。

寒さに関しては、現地の人が胸を張って言う「典型的な十勝晴れ」

が私達を守ってくれた。

放射冷却により早朝こそマイナス4度の霜が支配する世界で

あったものの、日中は穏やかに晴れ渡り、慣れない厚着では

汗をかいてしまう。

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それでも温度調節が上手にできぬおばかな私。

暑いからと上着を脱ぐと、汗が引いた頃に寒気がする。

当初は、お腹を冷やしてしまい、現地の人に

「近くにトイレありますか?」と聞くと「そこに公園があるけど

…今の時期からは閉鎖してっから。水道しばれちゃうんで。

しばれるって…解る?凍るってこと。」

使えない公衆トイレに絶望しつつ、両足の親指を曲げたまま

堪えて、やっとの思いで、お昼のラーメン屋さんで安堵の

溜め息をもらす事となる。

糞死しなかったのは不幸中の幸い。

ところが、ハプニングに魅入られた私の宿命は、さらに

新たな展開を迎えることとなるのであった。

(橋田先生くらい、話せば長いので、次回へと続く。)

http://jp.youtube.com/watch?v=R4DlrwYeoSM&feature=related

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