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2008年10月 4日 (土)

小さな恋のメロディー

こんな人間ゆえ、連日香ばしい事件は絶えず、日記の記事

には事欠かない日々ではあるものの、ここのところ更新も

途切れ勝ちである。

秋の澄み渡った風に吹かれると、ついつい秋愁とでも言うべきか、

センチメンタルな心が頭をもたげてしまう。

以下、追憶に根ざして綴るのみで、不快に思われるむきも、

なきにしもあらんや、という前置きが必要な初恋の思い出。

問わず語りゆえ、どうぞスルーしちゃってください。

Kちゃんは二歳年上の美人さんであった。

生家の隣りに、専業農家である重厚な土壁造りの豪邸があり、

その家の長女であった。

必然的に、物心つく前から私を可愛がってくれ、いつも野山を

駆け回って一緒に遊んでくれた。

家電の大型ダンボールを手に入れた二人は、キャタピラー

よろしく、筒の中に並んで入って草むらをめくらめっぽうに

押し進んだ。

やがてバランスを崩して倒れこんでは、顔を見合わせて大笑い

したものである。

濃厚な草いきれを伴う記憶であった。

おしろい花の粉を集めたり、落ち葉で焼き芋も焼いた。

花火をしたり、子犬と戯れたりもした。

お医者さんごっこもやった。

彼女も子供なりに後ろ暗い気持ちがあったのであろう、二階の

客用布団を仕舞いこんでいる湿っぽい納戸へと導かれた。

男女の性差についてほとんど知識のない子供ゆえ、互いを

凝視するだけのあどけない行為ではあったものの、あきらかに

女性が発情した際の独特な香りは、いまも鼻腔に残る。

やがて彼女も中学生となり、突然長かった髪の毛を短く整え、

一新された制服姿を目にした時点でパタリと疎遠になってしまう。

なんだか急に大人びて、私だけがおいてきぼりをくらった感じ

であった。

高校卒業後、県外に就職した噂だけは耳にしていたが、私自身

自分の身の回りのことが精一杯で、気にも止めてなかった。

突然、母の口から彼女の訃報を聞いたときには俄かには理解

できず、黙って新聞記事を目で追った。

友人とドライブ中に事故に巻き込まれた事実が、無機質な文章

で小さく印刷されているだけであった。

松山に帰ったと聞き、随分と久し振りに訪れた隣家で、彼女は

小さな箱に収まっていた。

「moukun…。来てくれたん。」

叔母さんは、ひとまわりやつれて口にハンカチをあてた。

叔父さんは縁側で「逝ってしもた。」と、うわごとのように

繰り返すばかりであった。

お線香をあげて、遺影に目をやると、一際美しく微笑む笑顔が

こちらを見ていた。

自宅に戻ると、視界の端で、息子の心の温度を測っている母の

視線に気付いたので、「ちゃんと挨拶してきたよ。」と大人のフリを

して落ち着いてみせた。

下戸でアルコールを受け付けない父宛てに届いていたウイスキー

を自室に持ち込んでラッパ飲みしながら、声を出さずに一晩中泣いた。

明け方、空になったボトルを蹴飛ばし、少しだけトイレで吐いて、

結局お葬式には出ずに二日酔いのまま自転車で学校へむかった。

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コメント

初恋というだけで、切ないもの。

その大切な思い出の人が、帰らぬ人となるのは、
もっと切ないもの。

心が引きちぎられるような痛みです。
ちぎられた心、どんなに時間が経過したとしても、
弱い痛みとなって残るのでしょう。

痛いです。

ごめんなさい。

投稿: くるぶし | 2008年10月 4日 (土) 22時56分

くるぶしさん、ごめんなさい。
書くべきことではないことなのに、なぜか
キーボードを叩いてました。
きっと、いまだにしこりとなって残っている
のでしょう。
それでも、今となっては故郷の緑を思い出す
いい記憶しか出てはきません。

投稿: moukun | 2008年10月 4日 (土) 23時01分

おはようございます。

可愛い初恋の思い出が、哀しい思い出になってしまったんですね。
それは心のどこかでいつまでも残っているんでしょうね。


投稿: | 2008年10月 5日 (日) 05時13分

静さん、こんにちは。
あわわ。
無意識のうちに暗い話を書いちゃってました。
日常のズッコケ話が基本となっている日記
なのですが。
いけませんですね。秋は。

投稿: moukun | 2008年10月 5日 (日) 09時09分

小さな恋のメロディーにときめきを。。。
じゃなかったのですね。

moukunさん特有の書き出しに、うんうんと読み進み。。。
そんな結末になろうとは想像もしていませんでした。

美しくも悲しい想い出。
やっぱり秋ですね。

投稿: wakazukuri | 2008年10月 5日 (日) 12時54分

wakaさま、こんばんは。
失礼いたしました。
なんだか秋になると狂気を纏うようで。
いけませんねぇ。
黙っていましたが、私。
満月の夜には狼男に変身するのです。
ほらね。
うっすらと。
(ヒゲが濃いだけかも。しかも満月ぢゃないし。
あまっさえ雨まで降ってるし。)(笑)

投稿: moukun | 2008年10月 5日 (日) 18時57分

まったく飲めない私が一度だけ前後不覚になるほど飲んだことがあるの。
と言っても、サントリーの角の一番小さいのを飲んだだけなんだけど・・・。
ずっとずっとすきだったひとに、
「N子はひとりでも生きていける強い人間だから・・・」って言われて、
その夜、生まれて初めてわからなくなるまで飲んだの。
でも、そういうつらいことや悲しいことがなかったら、
私は今よりももっともっとイヤな女になってただろうなって、思う。
moukunさんがやさしいのは、つらいことをいろいろ経験したからなんだろうな
って、思いました。

投稿: azur | 2008年10月 6日 (月) 16時03分

azurさん、こんばんは。
そうなんだ。
辛かったでしょうね。
けど、それを乗り越えたからこそ全てを
受け止めてくださる現在のハズと出会えた
のですよね。
愛するよりも愛されている現在のほうが
数段幸せじゃないですか。
ジュリーに浮気なんてしててはダメですぜ。
(笑)

投稿: moukun | 2008年10月 6日 (月) 18時29分

moukunさん、こんにちは。

秋というのは、どうして物思う気持ちにさせてくれるのでしょう。
澄み渡る空、ひんやりとした心地よい風に、心が開放されるからでしょうか。
予期せぬ別れは、本当に辛いものですね。
楽しかった出来事だけが、何度何度も思い出されます。
輝いていた笑顔だけが、ひときわ輝いて思い出されます。

この春、私は幼なじみを失いました。
一緒に保育園に通い、大きなランドセルが小さく見えるまで仲良く通い、
そして憧れのセーラー服を着て、カッコいい先輩に胸をときめかせたものでした。
その友人が郷里に戻り、うつと知ったのは冬のことでした。
そして春、自ら・・・。
夏に帰省したときに、お墓参りしてきました。
何故・・・ここでしか会えないの?
と、涙をこらえきれませんでした。
まだ思い出すと辛いです。

投稿: 水無月 | 2008年10月 9日 (木) 11時17分

水無月さん、こんばんは。
切ない思いを呼び起こさせてごめんね。
そういうことだったのですか。
ちらとニュアンスで察していたものの。

仕事関係でも、やはり二人。
私よりも若い前途ある人が自分で終止符を
うちました。
一人は鬱、一人は金銭面でした。
原因はともかく、自らというのは切ないですよね。
残されるのは家族、親族だけでなく、思い出を
共有した、すべての人々なのですから。

さあ、そろそろ切り換えて。
爽やかな季節にふさわしく、おばかにふざけて
暮らすとしましょう。(笑)
ルパン最高でした。(笑)

投稿: moukun | 2008年10月 9日 (木) 18時03分

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