酔いどれ天使
「悪しき習慣は心の錆びなり。」
・
毎度のことで、とことん酔っ払って深夜に目覚める。
暗闇に目が慣れると、リビングの定位置で倒れていたようだ。
反射的にアゴに手をやると、伸びたヒゲの感触から、入浴前に
倒れた事実を知る。
「またやってしまった…。」
僅かな反省の心さえも希薄になった近頃では、そのひとりごと
にさえ、どこか他人事の気配が漂う。
「とりあえず、風呂に入るべ。」と起き上がろうとした時点で、
全裸である自分に気が付く。
・
随分と昔のことに思える記憶を辿ってみると、断片的に思い出した。
酔っ払った状態でTVを眺めながら歯磨きをしていた私。
フローリングにポタポタと白い泡をこぼす私を鬼のように咎める
ワイフの声。
タオルで拭いながらも叱り続けていたようだ。
無意識のうちに洗面所で口をすすぎ、その流れのまま入浴すべく、
トランクスを洗濯カゴへ。
ところが何を血迷ったか、再びリビングに座り込む私。
煙草を一本取り出そうとしたところで事切れた状態であったようだ。
倒れたあとで、さすがに見かねたワイフが股間にタオルを
掛けてくれた行為に対して、「あ。…ありがとう。」と。
「な…なにがありがとう。よ。…。」
彼女が泣きながら視界から消えたあとの記憶はない。
KO負けの4回戦ボーイ。
・
数時間前の、やるせない過去を思い出して肩を落せば、携帯
電話が着信メールありのランプを点滅させているのに気付く。
「誰ぢゃ?」
画面をスクロールすれば、長女よりの着信が一件。
添付された写真は、数時間前の全裸の私であった。
題名は「中年ダビデ像」。
うぉぬぅおれっ!ふざけやがって!
憤懣やる方の無い私は、ただちに返信を返した。
「言わせておけば、くぬやるぅおうっ!覚えてらっしゃいっ!」
・
さすがに、その夜から自主的に禁酒して、やっと5日目。
ところが今宵はプロジェクトの打ち上げに誘われている。
意識のあるうちに自宅に辿りつければ御の字であるが、
今度はトイレでロダンの彫像のように眠っているところを
激写されぬよう、注意が必要である。
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