ミクロの決死圏
検査結果を一人で聞きに行くと、悪い報告の場合、握りつぶし
かねない私の性格を熟知したワイフが同行して病院へ。
問題児につきそう母親のような状態で、小競り合いをしながら
診察室の前に到着した。
お好み焼きが二枚は焼けるくらいの長い時間待ちぼうけを
くらって、やっと呼び出しの院内ポケベルが振動した。
・
マスクを取ると小室哲也によく似たH医師は、モニターの
映像を指差して躊躇せずに言い放った。
「レントゲンに異常が見られます。」
なかなかまじまじと見る機会もなかった己の腸のレントゲン。
自分で言うのもおこがましいが、太く立派で男前に写っている。
これのどこが異常だとおっしゃってけつかるんだろうか?
「この…盲腸のあたりに3~4cmの腫瘍状のものが見えます。」
どうも素人目で見ると判然としないのだが、小室さんがそう言う
んだから、まあ、そうなのであろう。
・
病理組織を調べてみないと正確な診断はできないので、次回
ファイバースコープによる精密検査を余儀なくされる。
またまた屈辱と羞恥に苛まれるのである。
もう…ヤダ。あたい。
・
自分自身、23歳まで婦人科の医師をしていたので(嘘)想像
がつくのだが、病変のある部位が直腸側ではないので、幸い
人工肛門を施す必要は無いであろうが、サイズから鑑みて、
開腹手術はまぬがれないであろうし、転移についても慎重を
期する必要があろう。
・
どうやら長丁場となりそうな気配が濃厚であるが、入院生活
ともなると美人看護師さんにちやほやされる自分を妄想して
自然と鼻の下を伸ばしている脳天気なクランケであった。
まったく。キミだけはね。殺しても死なないよ。
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